めっちゃ分かりやすい、うつ病のメカニズム
うつ病の原因ははっきり分かっていないのですがいくつか有力な仮説があり、めちゃくちゃ噛み砕いて説明させていただきます٩( 'ω' )و
自分の備忘録も兼ねて。
まず前提として
うつ病を「気分の問題」とか「気の持ちよう」とされていたのはもう遥か昔の話。徐々に研究が進み、ある日研究者たちは、どうやら脳みそに張り巡らされている「神経細胞」と、それらの間で受け渡しされている「神経伝達物質」にうつ病のヒントがあるんじゃないか?と考えました。神経細胞は脳みその中にめっちゃ沢山あります。
私たちが「楽しい!」とか「幸せだ!」と感じるのは心があるから生まれる訳ではなく、脳の機能によって、つまり、神経細胞同士の情報伝達によって生まれているとされています。
どうやって情報伝達しているのかというと、電気信号により1本の神経細胞が興奮すると、神経細胞の先っぽから「神経伝達物質」と言われる粉みたいなものが放出され、そこから繋がっている次の神経細胞が粉を受け取り、電気信号に変換され興奮、その繰り返し。。つまり神経伝達物質の受け渡しを繰り返して、人の感情はコントロールされているということです!
この神経伝達物質はけっこう種類あるのですが、人の喜怒哀楽に関係し、うつ病のキーポイントとして名高い物質としては「セロトニン」「ノルアドレナリン」「ドパミン」という3種類が良く挙げられます。なんか聞いたことありますよね〜٩( 'ω' )و
この3物質がバランス良く放出され、受け渡しができると、人は幸福を感じ、心の健康は保たれると言われております。
神経伝達物質A「おーい、幸せだからセロトニンとノルアドレナリンとドパミンを渡すよ〜。」
神経伝達物質B「OK、受け取った。あ〜幸せだ〜。じゃ次の人にも渡すね。」
モノアミン仮説
これが古くて一番有名な仮説!なんと1960年代から提唱されているらしいです。
先ほど述べた「セロトニン」「ノルアドレナリン」「ドパミン」の量は過度なストレスにより減ります。そうすると、人はうつ病になるという仮説です。
これは至極当然で単純明快で分かりやすい。好きです。だって、これらの神経伝達物質がバランス良く受け渡しができると人は幸福になれる、だから減るとうつ病になるよね、というお話ですから。実際、お薬によってそれら神経伝達物質の濃度を増加させると、うつ病に効果が認められた!研究者たちもみんな「原因が分かったぞー!」と喜んだはずです。
ただ、人の脳みそは面白い。ある冷静な研究者がこう言いました。
「お薬飲んだら神経伝達物質の濃度はすぐに増加する。けど、実際患者さんが元気になってくるのは2週間かかるよね。このタイムラグはなんなんだ!?」
僕だったら「そこは触れないでおこうぜ。」と肩に手をそっと置くと思います。
そこで新たに提唱された仮説が「受容体感受性亢進仮説」!!
受容体感受性亢進仮説
難しい名前ですが身構える必要はありません。
1970年代、ある研究者はこの仮説を提唱しました。
説明します。
①もともとうつ傾向にある人はセロトニンなどの神経伝達物質の放出する量が少ない。
②少しの神経伝達物質でも足りるようにするため、神経伝達物質を受け取る受容体が頑張って働き、過敏になる(感受性を亢進させる)。
③なんらかのストレスにより一時的に神経伝達物質が一気に放出され、過敏な受容体を刺激する。
④うつになる。
という仮説です(③と④の関係性は調べたけど分かりませんでした。不明とされているとも書かれておりました。)。
喉が極限に乾いた状態で、公園の蛇口を捻ったら勢い良く出てきてびっくりしたことありますよね。あれと似てる気がします!
また、お薬を飲み始めて2週間したら、過敏な受容体の働きが減少したことが証明されました。
おお、うつに効果が出るまでの2週間と、一致するじゃないか!!つまり、お薬を飲み始めて2週間経過したころ、神経細胞の過敏な受容体が落ち着く=うつ病が改善してくる。モノアミン仮説の矛盾だったタイムラグが解決した!
しかし、結局、全ての薬が受容体の働きを落ち着かせる訳じゃない、とかの理由でこれも100%立証されず、仮説止まりです。
コルチゾール仮説
1990年代。もうどうすればいいんだ。何が正しいんだ。そう自問自答し、研究し続けていた時、ある発見がありました。
うつ病の患者さんでは、「脳の海馬(主に記憶に関与する脳内の部位)の体積が減少している」というものでした。つまり脳みそが攻撃されているという大変ショッキングな発見でした。
人がストレスを受けると、副腎からコルチゾールと呼ばれるホルモンが分泌されます。コルチゾール は本来人をストレスから守るために働く物質です。しかし、慢性的なストレスを抱える人ではこのコルチゾールが過剰に分泌し続けます。
過剰に分泌されたコルチゾールは何を血迷ったか、臓器を攻撃し始めます。そう、海馬も例外ではなく攻撃され、これがうつ病と関係があるのではないかとされている仮説です。
コルチゾールは味方でもあるし、敵でもある。峰不二子みたいな奴です。
BDNF仮説
コルチゾール仮説を打ち出し、波に乗っていました。2000年代、その流れに乗り、提唱されたのがBDNF仮説です!
BDNF(脳由来神経栄養因子)は脳内に広く存在し、脳みその神経細胞の修復に関わる物質です。
コルチゾールとBDNFは密接な関係にあります。コルチゾールの過剰分泌はBDNFの発現を抑制します。つまり、コルチゾールが海馬を攻撃しても、BDNFが少ないから神経を修復出来ない=うつ病になってしまうという仮説です(うつ病では海馬を中心にBDNFの発現が低下している)。
またお薬服用により、血清BDNF濃度が増加することが分かっています。
噛み砕くと、コルチゾールで攻撃されてもBDNFが少ないので修復出来ないよね、という事です。
最後のまとめ
全て仮説なので何が正しいか分からないところがありますが、前提としてうつ病になった際は主治医の先生の判断のもと、服薬することがまず大切だと思います。
その反面、人によって効果の大小があるため、策は多い方がいいと考えています。
キックボクシング(やっぱり出してきた)の特徴である「短時間の有酸素運動」は、BDNFの発現を促し、神経伝達物質を増やすだけではなく、長時間の有酸素運動で生じるコルチゾールの過剰分泌を避けることが可能と期待されています。
また、お薬だけでは本質的には変わらないというか、伝えるのが難しいですが、「出来ないことが出来るようになる」という達成感、自己肯定感を得ることが心の治癒には必要と思います。
もし「あれ、最近気分が落ち込むな。」と感じたら、気軽に心療内科など受診されてみてはいかがでしょうか。また、少し心に余裕が出てきたら、何か達成感を得られるような事に取り組んでみるのもいいかと思います。
参考:
うつ病こころとからだ.「うつ病が発症するしくみ」<https://utsu.ne.jp/depression/mechanism/>(参照日2021年6月5日).
高津心音メンタルクリニック.「うつ病 発症メカニズム」<https://www.cocorone-clinic.com/column/utsu_mechanism.html>(参照日2021年6月5日).
めぐろ駅東口メンタルクリニック.「うつ病の原因研究最前線」 <https://www.mh-mental.jp/policy/detail/id=146>(参照日2021年6月5日).
吾郷由希夫・田熊一敞・松田 敏夫.(2009).「うつ病と副腎皮質ステロイドホルモン受容体」.『日薬理誌』
河北英詮.(1994年:33回東京医科大学医学会総会における特別講演).「うつ病の生物学的研究と病因論 一特にアミン・アミノ酸について一」.『東京医科大学雑誌』